なぜ人間など動物は寝るのか?

脳が疲労して眠くなる

人は人生の3分の1を睡眠に費やすと言われています。70歳まで生きたとして睡眠時間は約20万時間、それを惰眠するか、充実したときにするかは、眠りの質に大きくかかわってきます。

それにしても、私たちがこんなに膨大な時間を捧げている睡眠とは一体何なのでしょう。私たちはなぜ眠るのでしょう。眠くなるのでしょうか。私たち人間だけでなく、動物はなぜみな眠くなるのでしょうか。

睡眠とは、覚醒状態の周期的な一時停止、または中断として定義されています。高度な生理機能に裏付けされた適応行動であり、生体の防衛技術として考えられます。

脳の中の睡眠を司るシステムの働きからみると、脳には眠りを誘う抑制系と目覚めを促す覚醒系とがあって、この2つの機能のバランスにより睡眠状態が決まります。前者に関係しているのが、次項の睡眠物質です。後者には精神の緊張がかかわっています。

本質的な役割から考えると、睡眠は精神機能の回復のためにあるといえます。大脳の発達した動物になるほど、深い眠りの段階である「徐波睡眠」が、長い時間の割合で現れることがこの証拠です。もちろん、睡眠によって、肉体の疲労回復ができるのは日常体験している通りです。

眠りを誘う物質

長期間にわたって眠らないと、耐えられないほどの眠気に襲われることがあります。これは、ずっと起きていると脳の中に眠らせようとする圧力が生じるためともいえます。こうした睡眠圧を生じさせる神経メカニズムの要因に、体内での睡眠物質の生成と働きがあります。

睡眠物質の候補としてあげられているものは、数十種にも達しますが、とくに有名なものにデルタ睡眠誘発ペプチド、ムラミルペプチド、ウリジン、酸化型グルタチオンなどがあります。このうち、デルタ睡眠誘発ペプチドは、不眠症の治療にも利用されています。

睡眠物質は免疫とも関係があります。風邪をひいたとき、発熱とともに深い眠りが現れることはだれもが経験しているでしょう。これは、かぜのウイルスが体内で分解されて生じた物質が発熱を引き起こし、その一方で睡眠物質となって睡眠を誘発したり、さらに、ほかの睡眠物質の生成を刺激したりするからです。

こうした病気の時の眠気は、生体を防御する作用から生じているのです。

人間はどれくらい眠らないで大丈夫か?

人間や動物を長時間連続的に眠らせないでおく実験を「断眠実験」といいます。昔から、数多くの断眠実験の例が知られています。しかし、脳波の記録がないものは信頼できません。本当に眠らなかったかどうかは、外見だけからでは判断が難しいからです。

日本での記録では、23歳の青年により101時間というのが報告されています。眠気は、断眠3日目ごろから強くなり、錯覚や幻覚が現れました。このような現象は、断民によってなんらかの精神障害が生じるからではなく、目覚めている状態から特別な眠りであるレム睡眠にいきなり入ってしまうために起こるものなのです。

つまり、眠気が強い状態のときは、現実の世界と夢の世界が交互に現れてしまい、錯覚や幻覚を起すのです。

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